基礎的な種子の発芽メカニズムについて整理し、多肉の種子が発芽しないときの対応手順を整理しました。
実際に一部の対策をアガベで試してみたところ発芽率が向上したので、良ければお試しください。
種子の発芽率を向上させたい・・・
これまでインターネット上で多肉の実生記録を調べ、見よう見まねで実生に挑戦してきました。
しかしながら、思うように種子が発芽しなかったり、カビさせたり・・・。多くの種たちを芽吹きすることなく天国へ旅経たせてしまいました。
そこで、一度基本に立ち返って種子の発芽メカニズムを学び、そのうえで適切な実生方法について考えてみました。
基本的な種子の発芽メカニズム
高校生物の教科書をもとに種子が発芽するまでのメカニズムを下の図に整理しました。
- 成長を一旦停止し、高温・低温、乾燥や病害などの環境ストレスに対する耐性を上げた状態

- 温度、水、酸素、(種類によって光)が発芽条件を満たし、胚からジベレリンが合成。
- ジベレリンがでんぷん層に作用、アミラーゼを分泌

- アミラーゼが胚乳のでんぷんを分解してブドウ糖を生成

- 糖を吸収して胚が成長
- さらに糖が種子内の水分に溶けることで浸透圧が上昇し、さらに種が水分を含んで膨張
- 種皮を破り、発芽

ほぅ・・・
温度、水、酸素などの条件がそろう⇒ジベレリンが生成されて種子が休眠から発芽へ
ということですね。
種子の休眠
さらに、発芽メカニズムについてもう少し調べてみました。
すると、雪印種苗株式会社さんの賞品宣伝・技術情報誌「牧草と園芸」の中に「種子休眠・発芽の生理とメカニズム、第69巻第4号(2021年)」という記事を見つけました。
こちらの文献をかいつまんで、種子の休眠について整理しました。
参照資料URL:https://www.snowseed.co.jp/wp/wp-content/uploads/grass/692_03.pdf
生きている種子を、たとえ適切な環境条件で吸水させても発芽しない状態を休眠と言います。これに対し、非休眠は至適条件を中心に、広範囲の環境条件で発芽する状態です。
多くの場合、種子は休眠と非休眠の中間的な状態にあり、周囲の環境条件が特定の範囲内で
あれば発芽しますが、その範囲を超えると発芽しません。この状態を条件的休眠と言います。
ほうほう。休眠状態から目が覚めるとすぐになんでも発芽OK!となるわけではなく、
時間の経過や温度や水、酸素などの外的要因によって発芽する条件が広がっていくようですね。
イメージ図にすると以下のような感じでしょうか。

ただし、こちらの文献によると、要求される発芽条件を満たしていたとしても発芽しない休眠状態があり、
その要因が何かについて休眠クラスが分類されているようです。
適切な環境条件でも発芽しない要因が何かによって、「休眠のクラス」が分類されています。
なるほど、すこし難しいので、雑ですが私が理解しやすいように大きく2つにまとめると、
- 種子が未発達で成熟に時間を要している(形態的、生理的、形態生理的)
- 種子内部に水が届かず、吸水できない(物理的)
ということかと思います。
ということで、種子が発芽しない・・・というとき①と②のどちらの状態にあるのか(もしくは種子が死んでいるか)を見極めて対策をとる必要がありそうですね。
種子が発芽しない場合の対策
上述の種子が条件を満たしていても発芽しない要因のうち、
「②種子内部に水が届かず、吸水できない」状態への対応さくはシンプルに
種子を水に漬ける!
もしくは、
種皮を削る!
のふたつになりそうです。
続いて、「①種子が未発達で成熟に時間を要している」 状態への対応はどうするか・・・
単純に考えると、「種子が発達するのをじっくり待つこと」が解決策ですが、家庭で多肉を楽しむうえではスペースも限られているので、できれば早く発芽させたい・・・
そこで、もう少し文献を読み進めると、
種子の発芽制御にはアブシシン酸とジベレリンが拮抗的に働き、両者のバランスが発芽を決定します。
ほうほう、アブシシン酸が発芽を抑制、ジベレリンが発芽を促進すると・・・。
ジベレリン、先ほどの高校の教科書にもでてきましたね。
調べてみると、ホームセンターなどで”ジベレリン”を購入することができるようです。
住友化学の住友ジベレリン粉末の説明書をみると、

しっかりと花き類の発芽促進に適用がありました。
ということで、
発芽しない種をジベレリン溶液に漬ける(難しい場合は表土に溶液を散布?)
ことで発芽がすすむ可能性がありそうですね。
実際にやってみた(アガベ)
アガベの種子を播種した際、あまり発芽しなかったので、こちらで整理した情報をもとに
対策① メネデール水に24hr漬ける(吸水させる)
対策② 種子の一部を削る(吸水させやすくする、種皮を破りやすくする)
を実行したところ、発芽率100%を達成しました。
記録を別記事にまとめていますので、良かったら参照ください。

まとめ
- 種子のメカニズムから種子が発芽しなかったときの対策を整理しました。
- 種子が発芽しない場合、以下2つのどちらの状態かを種の様子から予測します。
①種子が未発達で成熟に時間を要している(形態的、生理的、形態生理的)
②種子内部に水が届かず、吸水できない(物理的) - ①の場合の対策は、
⇒種子の成熟をまつ
⇒ジベレリン液に漬ける(もしくはジベレリン液をスプレー) ※こちらに効果があるかはまだ検証途中です。 - ②の場合の対策は、
⇒種子を水に漬ける1日程度
⇒種皮の一部(根が出てくるところ)を削る ※種子を傷つけるリスクあり。 - 実際に1週間発芽しなかったアガベの種を水につけ、種皮の一部を削ったところ発芽率が0%⇒100%に向上した。
- 種は貴重ですし、手間がかかるが、大事に観察&手入れをして育てていくのがまた楽しい。
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